上地流‐型‐
Uechi-Ryu Kata
上地流空手における「型(かた)」は、単なる技の習得手段ではなく、心を整え、自らを磨くための“鏡”のような存在です。型を通して学ぶのは、力の出し方や構え方だけでなく、呼吸・集中・礼・そして調和の感覚。外側の形ではなく、内側に生まれる静けさこそが、上地流の型の本質にあります。
武道において「型」と「形」は似て非なるものです。「形」は見える動きの姿、「型」は理(ことわり)に基づいた精神と体の調和を指します。上地流では、この「型」を繰り返し体得することで、技と心が一体となり、やがて“型を離れた自由”へと進む道が開かれます。
稽古体系の中で型は、基礎と応用、静と動、守と破をつなぐ架け橋のような存在です。先人たちが積み重ねてきた知恵と哲学が一つひとつの動きに息づき、私たちはその中に、武道を超えた“生き方”を見出します。
上地流の型とは、伝統を守りながらも、自分自身と向き合うための終わりなき修行の道なのです。

SANCHIN
三戦
三戦(サンチン)は、上地流空手の根幹をなす基本型であり、中国南派少林拳の一門「パンガイヌーン流」を源流としています。創始者・上地完文師が中国福建省で修行し、呼吸法と体練法を学び体系化したもので、静と動、剛と柔を調和させることを目的としています。正しい姿勢と呼吸を通じて心身を統一し、体幹と集中力を養うことにより、内なる力の発現を導きます。三戦は単なる技術の稽古ではなく、武道としての「理と業の一致」を体現する修行であり、上地流の全ての型と精神の基礎となっています。

KANSHIWA
完子和
完子和(カンシワ)は、上地完文師が師・周子和のもとで学んだ拳法を基礎に、日本人の身体や精神に合わせて再構築した型です。三戦の理を受け継ぎながらも、より精密な動作と体の統一を追求し、静中に動を見いだす修行法として完成されました。立ち方、足運び、手の構えのすべてが呼吸と連動し、外見の動きよりも内面の整えを重視します。この型は、礼節と精神の鍛錬を通して「心・技・体」の調和を養い、上地流の精神的中核をなす重要な修行とされています。

KANSHU
完周
完周(カンシュウ)は、上地流の型の一つで、完子和と同様に「完文」と師・周子和の名を組み合わせて命名されたと伝えられています。道場系譜や流派紹介によれば、完周は直系の門人が考案した型で、上地流の中核型である三戦・十三・三十六を補完する位置づけとされます。たとえば、当サイト「上地流系空手道『型』の紹介」には「完周(カンシュウ、第二セーサン)」として記載があり、完文と周子和の名を融合させて創作された型だとしています。この型は、三戦や完子和の動きの発展・応用を意図した構成とされ、身体の動き、呼吸、重心移動の調整を磨くことを主目的とする型とされています。

SEICHIN
十戦
十戦(セイチン)は、上地流の伝承型としてしばしば挙げられる型です。流派系統紹介によれば、後世の門人によって編み出されたもので、三戦・十三・三十六に加えて、現代の上地流において八型の一つとされます。十戦は、動きの多様性を重視する型とされ、より応用的・発展的な技法や連繋動作を含むとされています

SESAN
十三
十三(セーサン)は、中国福建省から伝わった伝統的な型であり、上地完文師がその理合を受け継いで上地流に組み込みました。「十三(shí sān)」の名は、剛と柔・静と動など相反する力の統合を象徴しています。呼吸法は三戦と共通し、自然な息づかいの中に集中と安定を保ちます。動作は連続性と変化に富み、攻防一体の動きを通して柔軟な思考と瞬発的な判断を養います。十三は、理と力の調和を実践的に体現する中級型として、三戦の理をさらに発展させた重要な修行段階です。

SEIRYU
十六
十六には猫足立ちが多く含まれる点が特徴として挙げられ、他の型と多少性質を変えた構え・動きを持つとされています。動きに自由度が出るよう設計され、重心操作・柔軟な体捌きを鍛える場と見られます。下半身の粘りや転換、呼吸との調和をより細かに扱う修練型です。

KANCHIN
完戦
完戦完戦(カンチン)は、上地流七番目の型として位置づけられ、三十六に近似した動きや構成を持つと紹介される型です。下半身の粘りと捻転力を要求する型で、より高度な技術・力の統合を求められる修練型であり、より高度な技術・力の統合を求められる修練型であり、全体の型体系の完成度を高める存在として伝えられています。

SANSEIRYU
三十六
三十六(サンセイリュウ)は、上地流の型の中でも最も高度な修行段階に位置づけられ、三戦・十三を統合した集大成の型です。あらゆる方向からの攻防を想定し、流れるような動作の中に力強さと柔軟さを兼ね備えています。呼吸と体捌きの一体化を通して心身の調和を深め、外的な強さだけでなく内面的な静けさと洞察力を養うことを目的としています。三十六は、上地流空手における技と精神の到達点を示し、武道としての完成を象徴する重要な型とされています。

